アリス・リデルの名前からヒントを得たというキャロルの告白

――署名に添えた　「namesake同名の人へ…」に託してーー

アリス・リデルにプレゼントされた手書きの『地下の国のアリス』はファクシミリ版にされて1886年に出版されました。その一冊をアリスに贈る時にキャロルは、To Her whose namesake/one happy summer day/inspired his story/（同名の人へ／幸せな夏の日／あの物語を引き起こした／）という言葉を添えて署名をしました。

namesake同名の人とあるのは、物語の主人公と同じ名前の実在のアリスへという意味ですが、name‘s sake（名前故に）とすると（彼女の名前故に）となり、「あなたの名前のお陰で1862年7月4日にあの物語が吹き込まれた」というキャロルのメッセージが読めます。

　トランプとチェスの国はアリス・リデルという名前のアルファベット・ナンバーから思い付き、さらにはアリスの中間名のPleasanceのアルファベット・ナンバーは76なので、あの夏の日(4/7/’62)に隠れている7×6=42に呼応します。この42がある中間名といい、生年にも名前にも52がある少女アリスとの出会いは、千載一遇のチャンスだったのです。この添え書きの意味は、名前のアルファベット・ナンバーによってはっきり理解できます。

Alice Liddellのアルファベット・ナンバーは、52と88．

トランプの国では　一組のトランプは52枚。どこにもジョーカーはいません。

チェス盤は、縦横８マスずつあります。８×８＝　６４

　　ちなみに　Alice Pleasance Liddell　のアルファベット・ナンバーは164　

　　　　　　　アリス・リデル　８８　プレザンス　７６（88+76＝164）

こんな偶然を持っているアリス・リデルでしたので、キャロルが一番気に入っていたことが頷けます。

　　　　　　　　　　　　「42を操るキャロルの世界」（木場田由利子）に既載されたものに加筆　　

　　　　　　　　　　　　　『ルイス・キャロルハンドブック』七つ森書館　2013年