小噺：『スナーク狩り』の豚の裁判から

『不思議の国』のアリスが傍聴した裁判は有名ですが、『スナーク狩り』のバリスター（法廷弁護士）の夢の中での裁判はあまり知られていません。訴えられたのは豚で豚小屋を脱走したという罪状です。でも被告である豚は不在でした。

この章は42に関係なく話が進みます。もとになっているのは実際にあった裁判だそうですが、そういう本文はさておいて、ある村で豚の裁判があるという想定をして、ほんのちょっとした小噺を作ってみました。

凡太：「いゃーおどろいたね。豚小屋から逃げだした豚の裁判が

　あるんだってさ」　

平太：「そりゃ、脱走罪だね」

凡太：「罪だって？豚小屋から豚をとると小屋、脱走罪から罪をと

　　るとただの脱走、脱走の現場にいないから、アリバイあり

　でお咎めなし。捕まったとこで刑の執行なし。皆の証言があ

　ればな」

平太：「へえ、いったい何を証言するんだい？」

凡太：「三年前、村中が呼ばれた結婚式でふるまわれたウエディン　

グケーキ覚えてるかい？」

平太：「ああ、パン吉君が焼いたマジパンまだらの出来そこない、

忘れるもんか。その前に出された揚げ物は美味しかった」

凡太：「あのトンカツ、豚(とん)ずら^◆した豚だったのさ」　

平太：「ほな、宣告の前に処刑されようなものだ」

今や、村人の血となり肉となりました……　　

チーン、どこかで鈴(すず)が鳴りました。

　

　ハチャメチャの話ですが、一つの真実があります。皆さんは

　何だと思いますか？　

^{◆とんずら→　とんは遁走、ずらは、ずらかる　の意から逃げることをいう俗語　豚ずらは、豚が「とん」と読めることから拝借した当て字。}